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01. 焔之鳥
02. 鳳翼天翔
朝に醒めた顰(ひそ)む征野(せいや)の白き乙女
瑞(みず)の小佩(おひも)堅く結びて撓(たおり)に立つ
浅葱褪めた澱む 遠夜(たいや)の藍に沈む
失われし皹(かか)る吾(あ)が手を包む光よ
暁夢見し蒼き焔(ほむら)纏う鳳(とり)が
生(いく)の園まで舞い上がる
翠(みどり)絶えし大地(だいじ)にも 堕ちた天にも
五色(ごしき)の翼掲げて
羽に湛えた慈しみ 渾(すべ)ての魂(もの)に
与えてそだたく
暁夢見し蒼き焔(ほむら)纏う鳳(とり)が
生(いく)の園まで舞い上がる
天明を邀(むか)えた 梧桐(あおぎり)の丘から
鏘鏘(そうそう)と鳴く聲(こえ)が届いたら
紅月(あかつき)燃え逝く斯(か)かる星の 天空(そら)を惑う
幾億の魄霊(はくれい)を明(あか)き心で束ねて
生と死の理(ことわり)を 来世(あす)に伝えて舞い上がれ
03. 麒麟
戒 忌ましむは妬みと
誡 猜みの黒い肚
抱き締めても有漏に還る
相容れない水に油よ
金・輪・際 五彩の背に
金・輪・際 触れること罷らぬ
誨 老いぬれば駑材と
械 馬鹿履き違え
毒されても無漏に還る
堪え切れない醜い阿修羅よ
金・輪・際 五彩の背に
金・輪・際 触れること罷らぬ
行き摩りの宿世と
謳う痴れ者の面を蹴り天に翔け行く
金・輪・際 五彩の背に
金・輪・際 触れること罷らぬ
金・輪・際 錦の調べ
金・輪・際 聴くことも叶わぬ
04. 妖花忍法帖
咲き乱れる爛漫の
沁み返る香は 罌粟の花
密園に蠢く眩暈誘う四肢は
熟れ切らない 仄かなる魔性
褥に落つる影絵は
振り返る肌 妬け野原
讌にさざめく愚妹な欲望を
止められない 高鳴る魔鐘
妖かしの花 乱れ咲く宵は
魔的で虚ろな悦楽さえ
嗚呼 私の羽に垂れた腐れと
然して淫らな拝謁に
飲み干されそう
花 散り行く運命に
乱れ舞いて 抗えど
烈しく咲く程 虚しく散り行く
憐れぶ声も無く
妖かしの花 乱れ咲く宵は
魔的で虚ろな悦楽さえ
嗚呼 私の羽に垂れた腐れと
然して淫らで嫋やかな
排泄に押し流される 今も
05. 鵺
黒雲を其の身に纏い
丑三つに囀る
其の闇は正に黒い
兇事を山と帯びる
鳴弦の乾いた音に
幽かに混じりて
魂を 喚ばい戻す
寂しげな聲が游ぐ
頤を 風に乗せて 晒し上げる
此糸朱を奪う
剥き出しの肝を撫で付け
鵺が嗤う 鵺が唄う
「不気味に光る其の目を潰し
奇っ怪なる身体を
膾と切り刻んでも
残念乍ら無益なり。
それはぬえでは御座らぬ。」
人に隠れた鬼子の末期
着切る衣でふらふらと
里に紛れた女子の枕
穢も哀とてはらはらと
谷に焼かれた夜盗の弥次は
窟破りてやれやれと
泡沫水泡の折しも消ゆる間際
茜に射し込み 眩れ逝く 我を詰る
泡沫水泡の折しも消ゆる間際
尸を鎖し籠み 真柴に 我は染まる
真柴も 朱に染まる
鵺が嗤う 鵺が唄う
鵺が踊る 鵺が噎ぶ
06. 叢原火
狂る滾る手縄引き千切り
菖蒲躙る汚れた其の足で
縢る齧る騙る三田もとの 卵待たずに
朱雀を離らん咎人が 御庫裏売り捨て戯る
足音まで盗人の禍 (貪)
只 飼はいた 掠ふ胸に畏れるならば
惟 乾いた風吹く迄 叢彷徨う
祟る吐る玉綿撒き散らし
危めたるやごの上粗相をす
傾る流る鉛の水面向け 滓を放出(はなてん)
孔雀追はふ宿無し女は 御国売り棄ち爛る
彼の土間で転人(まろびと)の眼が (貪)
只 飼はいた 掠ふ胸に畏れるならば
惟 乾いた風吹く迄 叢彷徨う
只 飼はいた 掠ふ胸に畏れるならば
惟 乾いた風吹く迄 叢呻吟う
07. 飛頭蛮
涸れた心に宵闇 様になるのは恋時雨
嗚呼 今宵はぢっと待ってみょうわや
呉れた假文の行方は 哀れ厠の涅の中
嗚呼 未練の汚物塗れ
間抜け面した出涸らし男
昨夜限りで袂を分ち
蒸れた番の芋虫 邪魔になるのは蝉時雨
嗚呼 此の儘廓(くるわ)通いしょうかの
そんな場合じゃありゃしねえ
儂のかかあは何処行った
嗚呼 散々泣き暮らす
甲斐性なしの兵六玉よ
疾うにあたしは他し男と 西へ
胴からもげた暖なの頸が
或る日ちょこなんど垣根でにたり
挑みかかるや裾からもぐり
癪に障わって直ぐ蹴り飛ばし
08. 面影
皆紅の衣を濡らした
別れ路の狭霧(さぎり)
手向けの花は白き山査子(さんざし)
冥き途を逝く
今も忘れぬその声を聞き淀む
狂おしく爪を噛み砕いて
さざめく時の葉は 色褪せ
叶わぬ恋に散る 刹那に
二度とは逢えぬ運命と
煩う胸を灼き 明かに
鮮やぐ紅い花 紊れて
哀れなこの身を嗤う
尽きせぬ涙乾く間もなし
彼の岸に紕い
加羅の香りに揺れる顔(かんばせ)
遠き夢に消ゆ
夢寐に戦慄くこの腕を掻き毟る
流れる血を呪い乍ら
さざめく時の葉は 色褪せ
叶わぬ恋に散る 刹那に
二度とは逢えぬ運命と
煩う胸を灼き 明かに
鮮やぐ紅い花 紊れて
哀れなこの身を嗤う
皆紅の衣に映ろう
在りし日の姿
亡き人の影空しく散りて
触れる事も無く
さざめく時の葉は 色褪せ
叶わぬ恋に散る 刹那に
二度とは逢えぬ運命と
煩う胸を灼き 明かに
鮮やぐ紅い花 紊れて
哀れなこの身を嗤う
やがてその身を枯らすまで
09. 星の宿り
闇を往く舟に
寄せ返す波は
僅かな瞬きの後に
消えてゆく命の名残
さらさらと流れ
玉響(たまゆら)に光る
岸辺に積もるその亡骸を
鳥は空に還す
果てなく続く夜に
生まれた星は震え
放つ光に焼かれ
鳥は燃え墜ちて
夜空を流れる
風は凪ぎ時は逝く
人はただ朽ちてゆく
凍てついた空を
尚も包む闇よ
満ちてゆく星が
露の世を照らす
終の道を辿る者たちの
標と成る様に
いつしか星は宿り
幾千の絵を描く
儚い人の夢と
哀しい運命を
その身に湛えて
風は凪ぎ時は逝く
人はまた生まれ来る
凍てついた空に
さしも光る星よ
風は凪ぎ時は逝く
人はただ繰り返す
限りない罪に
紅くその手を濡らして
風渡り舟は往く
弔いの灯をともし
冴え渡る空を
仰ぎ謳う歌よ
永遠に祈る歌よ?
10. 舞いあがる
寄辺無い時も 遣る瀬無い時も
あんたが望むがやったら
二度と無い刻に 悔い残さんよに
わたしが翼あげらい
くらくらするような 未曾有の幕てや
ちょい しゃがんだち もう止まれない
すわ舞いあがれ 同じい時代 胸に抱いて 誉れらい
すわ舞いあがれ 違う声 響かしたら 唄えらい
明日の方に向けて
幽かな息吹が 萌えるがやったら
翔べる時が来らいじゃい
ふらふらしよるが なら肩貸しちゃらい
しょい(こな) 拝んだち もう戻れない
すわ舞いあがれ 同じい時代 胸に抱いて 誉れらい
すわ舞いあがれ 違う声 響かしたら 唄えらい
明日の方に向けて
すわ舞いあがれ すわ舞いあがれ
すわ舞いあがれ 同じい時代 胸に抱いて 誉れらい
すわ舞いあがれ 違う声 響かしたら 唄えらい
明日の方に向けて
すわ舞いあがれ 同じい時代 胸に抱いて 誉れらい
すわ 今 舞いあがれ
翔る夢 投げ出したら いけんがぜ
忘れんとってよ
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