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Onmyo-Za - 魑魅魍魎 lyrics



Tracks



01. 酒呑童子

赤るも 倫護(たぐいまぶ)り
私慝(しとく)を 咎(とが)められど
等閑(なおざり)午睡(ごすい)の余花(よか)
解け合う 故抔亡く(ゆえなどなく)

刻を 遺す 鬼の名 彩(だ)み
孳尾(じび)の儘(まま)に

噫(ああ)是(かく)も 嶮(けだ)し 山(むれ)を
何故(なにゆえ) 徒跣(かちはだし)で
趾(あしゆび)尖銳(せんえい)なる
爪こそ 化人(けにん)の瑕(きず)

刻を 遺す 鬼の名 彩(だ)み
孳尾(じび)の儘(まま)に

女(めす)に 窶(やつ)した
謀(たばか)りの綱を 振り解いて
芸に 傲(おご)った
金色(こんじき)の時雨(しぐれ)降り亂れて

光輝(こうき)を 賴る 者を
嘲(あざけ)る 義は 無かれど

僧に 窶(やつ)した
ト部(うらべ)の禮言(いやごと)振り落として
酒(ささ)に 盛られた 貞しき光を
振り拂って 闇夜(あんや)を貶(おと)す者に
諂(へつら)う 氣は 更 無し

讒誣(ざんぶ)の海
繫縛(けばく)の河 溺(おぼ)ほす
意趣(いしゅ)なら 空(あだ)し
流刑(るけい)の膿(うみ)
泥犁(ないり)の苛(か)は
甘嚙(あまが)みか 歪(いぴつ)なり

02. 蘭

此(こ)の群青が 朱(あけ)に染まる
其の私語(ささめき)が 無下(むげ)に舞い散る
運命(さだめ)の糸なら 疾(と)うに
斬り捨てた 己(おのれ)の擇(よ)りし途(みち)
供(とも)の 螺旋(らせん)を 墮(お)つる

胸の 逝(ゆ)き場を 探して
冱(い)てる 孤獨を 止めて
遙(はる)に 滲(にじ)む
肱(かいな)の傍(そば)に
只(ただ) 君の 隨意(まにま)に

此(こ)の亂聲(らんじょう)が
やけに離(さか)る
其の騷(ざわ)めきが
無礙(むげ)に過ぎて行く

運命(さだめ)の異圖(いと)なら
問うにも及(およ)ばぬ
戾れぬ丈(だけ)の途(みち)
遂に螺旋(らせん)を 昇る

胸の 逝(ゆ)き場を 探して
冱(い)てる 孤獨を 止めて
遙に 滲む 肱(かいな)の傍に
只 君の 隨意(まにま)に

滅(ほろ)び消(き)ゆる 我が身の
傍で殉(とな)ふ 憐(あわ)れさよ
せめて過ごる 來ん世は
輪迴(りんね)の果てに 重ねて
見(まみ)ゆる 風と月とぞ

胸の 逝(ゆ)き場を 探して
埋ける 相座(そうざ)求めて
遙に滲(にじ)む無間の空へ
此の隨(まま)束(つか)に微睡(まどろ)む

03. がしゃ髑髏

屍(かばね)と屍(かばね)が寄り合いて
伽藍(がらん)の眼(まなこ)は
虛(うつ)く洞(ほら) (髏)(ろう)

夜の默(しじま)を裂く
風が がしゃりと鳴りゃあ
化檀揭(けだんかか)げた腕 闇を震わす
轟(とどろ)くは 怒號(どごう)

去らねば 飧らう迄

骨(かわら)と骨(かわら)が組み合いて
見上げる軀(からだ)で隱る月 (髏)(ろう)

夜の荒野(あれの)を往(ゆ)く
腳が ぴたり止まりゃあ
諸に 笑けた臑(すね)
藪(やぶ)を耕(たがや)す
轟(とどろ)くは 怒號(どごう)

然為(さす)れば 飧うう迄

もう 逃げられまい
瞬(またた)く間に 餌食(えば)まれる
眼を 閉じる刻が 今生(こんじょう)の 別れ
此處(ここ)に 朽ち果てる

去らねば 飧らう迄
屍(かばね)と 混ぜる迄

04. 野衾忍法帖

小人(しょうじん)なら 語るに落ちる
大人(たいじん)とて 猿の筆が滑る
行き摩(ず)りの 皆樣(みなさま)
物見笠(ものみがさ) 素見騷(すけんぞめ)きか

偶人(ぐうじん)なら 騙(かた)るに墮ちる
厭人(えんじん)とて 戀(こ)うること忘らぬ

行き摩りの 皆樣は
物見笠(ものみがさ) 素見騷(すけんぞめ)きか

知らぬを 只 貶(おとし)め
見えぬを 只 推(お)し遣(や)る
吐いた唾(つばき) 飲まねば解(わか)らぬ

御座(おざ)なりを 已(や)めて
奇(くし)ぶ 火を燈す
疑(うたぐ)りを 迂めて
怪士(あやかし)を愛(め)でる

知らぬを 只 貶(おとし)め
見えぬを 只 推(お)し遣(や)る
知らぬを 只 知らせて
見えぬを 只 見遣(みや)りて
要らぬを 只 聽(ゆる)して
食えぬを 只 往(い)なして
刮(こそ)ぎ見れば ひらりと野衾(むささび)

05. 紅葉

然樣(そう) 搜(さが)しける
鬼女(おにめ)は
現在(いま)の 憂(う)き名(な)
此(こ)の身(み)の 處遇(しょぐう)
もう 逃(に)げられぬ
山鳥(やまどり)
聲(こえ)を 聽(き)くは
情(こころ)

嗚呼(ああ) 罅(は)ぜるは
剎那(せつな)の夢(ゆめ)
小鳥(こがらす)なら
一太刀(ひとたち)で 逝(ゆ)ける

其(そ)の手(て)を
差(さ)し向(む)ける前(まえ)に
言選(ことえ)りを
願(ねが)い上(あ)げる
皇(すめら)に 傅(かしづ)かる
貴方(あなた)に
せめても 手向(たむ)く迄(まで)

左右(そう) 頑(かたくな)に
端張(はたば)る
汝(いまし) 聲(こえ)は
滅(ほろ)びの 咒文(じゅもん)
念(もう)う 嗾(けしか)けし
主(あるじ)は
曾(かつ)て 戀(こ)いし
男(ひと)

嗚呼(ああ) 疏解(そかい)は
只(ただ) 一言(ひとこと)
凩(こがらし)など
吹(ふ)く暇(ひま)も
要(い)らぬ
其(そ)の手(て)を
差(さ)し向(む)ける前(まえ)に
言選(ことえ)りを
願(ねが)い上(あ)げる
皇(すめら)に 傅(かしづ)かる
貴方(あなた)に
せめても 手向(たむ)く迄(まで)

嗚呼(ああ) 罅(は)ぜるは
剎那(せつな)の夢(ゆめ)
小鳥(こがらす)なと
小太刀(おだち)なと
參(まい)れ

兩手(りょうて)を
差(さ)し仰(あお)ぐ前(まえ)に
此(こ)の髮(かみ)を
納(おさ)め賜(たま)え
淚(なみだ)に
暮(く)れ果(は)てる
此(こ)の子(こ)に
別離(かわれ)を
詫(わ)びる為(ため)

06. 青坊主

鐘の鳴る間に 憂(う)き世は反(かえ)る
然(さ)れど 我が身は 明日をも知れぬ
搖り返す 取沙汰(とりざた)に 身を委(ゆだ)ね
噴(ふ)き上げる
傀儡(かいらい)のまやかしに 抄(すく)われる

亂人(らんにん) 勢人(せいにん) 業人(ごうにん)
奪って 一つ 鬼の頸(くび)
濫飲(らんいん) 聲韻(せいいん) 強引
威張(いば)っちゃ居(お)らぬ 世迷(よま)いの句(く)

鶴の鳴く間に 寢る子は育つ
然(さ)れば 渡るは 世俗(せぞく)の海路(うみじ)
繰り返す 過(あやま)ちを
文(かざ)り付け

汲(く)み上げる甘露(あまつゆ)の恩惠(おんけい)に
魅(み)せられる
亂人(らんにん) 勢人(せいにん) 業人(ごうにん)
穿(うが)って 二つ 鬼の頸(くび)
濫飲(らんいん) 聲韻(せいいん)
強引 威張(いば)っちゃ居(お)らぬ 世迷(よま)いの句(く)

穩座(おんざ)も 頓挫(とんざ)も
せざる 因(よすが)の
俎(まないた)に 魚(うお)が
跳ねて 俟(ま)つなら

亂人(らんにん) 勢人(せいにん) 業人(ごうにん)
奪(うば)って要(い)らぬ 鬼の頸(くび)
濫飲(らんいん) 聲韻(せいいん) 強引(ごういん)
茹(う)だっちゃ居るが 世迷(よま)いを戲(たわ)る

07. 魃

變幻自在(へんげんじざい)の 擦れ枯らし
折柄(おりから)飛び出し
大上段(だいじょうだん)
御託(ごたく)を並べて 小五月蠅(こうるさ)く
居直(いなお)る構(かま)えで 澄まし顏

嗚呼 如何(いか)でか
偏(こず)み 睨(ね)める 目指し

超えて 超えて 堪(こた)える為
燃えて 燃えて 悶(もだ)える程
異端(いたん)の鎖(くさり) 飛び散る頃に
肥えて 肥えて 應える為
萌えて 萌えて 貰わずとも
渾(すべ)て終わりて 飛び去る樣に

俄然(がぜん)と憚(はばか)る 穀潰(ごくつぶ)し
折(おり)しも 驅け拔け 拔け驅けと
薀蓄傾(うんちくかたむ)け 小賢(こざか)しく
流行りも 廢(すた)りも 受け容(い)れぬ

嗚呼 如何(いか)でか
疏(うど)み 責める 根差(ねざ)し

超えて 超えて 堪(こた)える為
燃えて 燃えて 悶(もだ)える程
異端(いたん)の鎖(くさり) 飛び散る頃に
肥えて 肥えて 應える為
萌えて 萌えて 貰わずとも
渾(すべ)て終わりて 飛び去る樣に

超えて 超えて 堪(こた)える為
燃えて 燃えて 悶(もだ)える程
異端(いたん)の鎖(くさり) 飛び散る頃に
肥えて 肥えて 應える為
萌えて 萌えて 貰わずとも
渾(すべ)て終わりて 飛び去る樣に

08. しょうけら

胸の奧で 三屍(むし)が騷ぐなら
がいな聲で 皆で おらびなはい
無理な にわく からうより
歌が響けば 踴り出す

彼方此方(あちこち) まっことに
其方此方(そちこち) 言いよらい
唯々(いい)の花が舞う
(唯 唯 唯)(はい はい はい)
彼方此方(あちこち) 見事に
其方此方(そちこち) 舞いよらい
天まで屆け (唯)(はい)

腹の底で 聲を張り上げて
ねぬぞ ねたかぞ ねたかぞ ねぬば と
おおけなこと うずむより
拍子を打てば もんてくる

彼方此方(あちこち) まっことに
其方此方(そちこち) 言いよらい
唯々(いい)の花が舞う
(唯 唯 唯)(はい はい はい)
彼方此方(あちこち) 見事に
其方此方(そちこち) 舞いよらい
天まで屆け (唯)(はい)

彼方此方(あちこち) まっことに
其方此方(そちこち) 言いよらい
唯々(いい)の花が舞う
(唯 唯 唯)(はい はい はい)
彼方此方(あちこち) 見事に
其方此方(そちこち) 舞いよらい
名殘惜(なごりお)しいけん

もう一邊(いっぺん)
彼方此方(あちこち) まっことに
其方此方(そちこち) 言いよらい
唯々(いい)の花が舞う
(唯 唯 唯)(はい はい はい)
彼方此方(あちこち) 見事に
其方此方(そちこち) 舞いよらい
コレデオシマイ (唯)(はい)

09. 鬼一口

異裡(ことさと)外(はず)れの
荒屋(あばらや)に 人飧らう
鬼の 在りという

(座(わ)す 座(わ)す 座(わ)す) 驀然(ばくぜん)
(座す 座す 座す)獨行(どっこう)
(座す 座す 座す)辣腕(らつわん)
(座す 座す 座す)べっかっこう

電光石火(でんこうせっか)の
早業(はやわざ)に たじろぐ
聲(こえ)すら 飧らいけり

(座(わ)す 座(わ)す 座(わ)す) 驀然(ばくぜん)
(座す 座す 座す)獨行(どっこう)
(座す 座す 座す)辣腕(らつわん)
(座す 座す 座す)べっかっこう

戰(おのの)く 剎那(せつな)に
鬼が嗤(わら)う 響動(どよ)めく
間も無く 鬼が屠(ほふ)る

あな憂(う)や いとも あられ無き
末期(まつご)劫火(ごうか)で
炙(あぶ)る 拷(ごう)と 比(くら)ぶれば
許(ばか)りか 寧(むし)ろ
未練など 無いも もう直(じき)
我(われ)を 嚙碎(ごうさい)が 攫(さら)う

宛(さなが)ら 牙(きば)の
尖(する)どさときたら 襤褸(らんる)の
如(ごと)く 肉を
引き裂(さ)こう 恐(おそ)れる 胸が
早鐘(はやがね)を 鳴らし
死に逝く 我を 恐悸(きょうき)へと
攫(さら)う


戰(おのの)く 剎那(せつな)に
鬼が嗤(わら)う
響動(どよ)めく 間も無く
鬼が屠(ほふ)る 蠢(うごめ)く
剎那(せつな)に 鬼が嗤(わら)う
阿(あ)と吐(は)く 間も無く
おくびと化(か)す

10. 道成寺蛇ノ獄

限(きれ)ない 闇を 擦(なす)りて
仄白(ほのじろ)い 雨が降る
濡(そぼ)つる 螟蛾(めいが)の翅(はね)を
穩やかに(も)ぎ落とす
もう 何も 視(み)えぬ
瘧(わらわやみ)の中
深く深く 沈みたい

止まない雨を 集めて
仄暗(ほのくら)い 闇が 眩(く)る
時雨(しぐ)れることも
忘れた 眼鞘(まなざや)を 閉(と)ざす為
もう 誰も知らぬ 黃泉國(よもつくに)の底
ずっと ずっと 燒かれたい

嗚呼 戀の歌を 嗚呼 彼に伝えて
嗚呼 遠き風に 愛おしき 聲を聽く


旅の 緣(よすが)に 戲(ざ)れて
誑(たら)した 女(おみな)
見目麗(みめうるわ)しく
艷事欠(つやことか)かぬ
色女(いろめ) 何時(いつ)か
番(つが)うと容易(たやす)く包(くる)め枕(ま)いて
畢(おわ)るや否(いな)や
穴(けつ)を捲(ま)くりて 掃路(きろ)へ

何處(いずこ)へ 失(う)せた
愛しき 男(おのこ)
失われたのは 花 決して
違(たが)わぬ 貴方(あなた)の 匈い
詐(いつわ)りの 業(ごう)に 泣いて
此(こ)の儘(まま) 往(い)かないで
彼(あ)の日が墮ちてゆく

頑(かたくな)に迫(せま)る
蛇心(じゃしん)の嬌笑(きょうしょう)
抗(あらが)い 膠(にべ)も無く
戲言(けごん)の契(ちぎ)りを
片腹痛(かたはらいた)しと
足蹴(あしげ)にすれども 無馱

嗚呼 せめて 只 一言(ひとこと)
「其方戀(そなたこい)し」と 聞かせて
噓でも偽りでも どうか其の傍(そば)に 居させて
噫(ああ)逢瀨(おうせ)重(かさ)ね重(がさ)ね
戀(こ)うる 心 更に 燃え上がる 噫(ああ)

立ち籠(こ)める 夏霞(なつがすみ)
憧れは 泡と消(き)ゆる
止めどなく 流れ 落(お)つるは
悔いの淚 貴方を信じて

野邊(のべ)に 笑く 花にさえ
憐(あわ)れびを 向けように
人でなく畜生(ちくしょう)の道を只
這(は)いずれば「戀いもせぬわ」と
余りと言えば 余りない言い種(ぐさ)


臠(にく)が爛(ただ)れる
殘酷(ざんこく)の雨
蛇(くちなわ)の獄(ごく)の中
生きて掃さぬ 骨も殘さぬ
其の罪を 悔して死ね
今更 呼ばないで
もう直(じき) 樂(らく)になる

愛しい 人を 殺(あや)めた
贖(あがな)いの 雨が降る
止まない雨を 集めた
滾(たぎ)つ瀨に 身を委(まか)す

11. 鎮魂の歌

足音響(あのとひび)かせて
叢立(むらだち)は勇(いさ)む
いざや鬼殿(おにどの)へ
その首を討(う)たんと

暮れ懸(か)かる空に
昔時(せきじ)を打ち捨て
守らう(おもかげ)
瞼(まなぶた)に紊(みだ)れる

焰(ほむら)を揭(かか)げよ
鬨(とき)の聲を呼ぶ
今宵掃(よこいかえ)る 道などいらぬ
朽ち果てたこの骨に
唯(ただ)花が笑けば良い

荒(あら)ぶる爪牙(そうが)に
屍累々(かばねるいるい)と
在りし日の夢は
散(ち)り散(ぢ)りに毀(こぼ)れる

血に濡れた友の 唇は歌う
さらば愛(いと)し子よ 健やかに生きよと
其の歌を刃(やいば)に
竦(すく)む足を驅(か)る

語(かた)り繼(つ)がう 名前はいらぬ
朽ち果てたこの骨に 唯 花が笑けば良い

いつか時は 總てを浚(さら)い
光射(ひかりさ)す この阜(おか)を
また幼子(おさなご)は驅けるだろう
寄り添い往(ゆ)く 生き世は失(う)せど
骨に笑く其の花に 君が微笑めば良い

12. にょろにょろ

髫髮子(うないご)の 手房(たぶさ)へ
明日の 火を燈す
夢現(ゆめうつつ)の 光りかの
稿(わら)もがる 宇宙の彼方へ
投(な)いだ手を 延ばせば
未(ま)だ 產まれ立ての無窮(むきゅう)の
才(かど)は 垂(しだ)らない故(から)


心が 滑り墮ちるときは
冀望(きぼう)の數より 愛(かな)しさだけ
求めた 如何(どう)して
胸が 熱(ほと)る ときは
鬱(ふさ)いだ 悄氣迂(しょげこ)みも
空に消えた

幼氣(いたいけ)を攜(たずさ)え
嘖(さいな)む悲(ひ)を躲(かわ)す
夢心地の 赤らかの 末那(まな)さあ
おがる 仔蟲(しちゅう)の貴方へ
涕(なみだ)を 取り成せば 未だ
忘れ掛けの 夢中の 窗(まど)は
無くなさい故(から)

何かを 成せる 意志の
在り處(か)何處(いずこ)はあれども
此處(ここ)では無いと 撥(は)ねた
然(そ)うして
辿(たど)り著いた海は澱(よど)んだ
斑聲(むらごえ)も 若音(わかね)に變えて

幼氣(いたいけ)を 攜(たずさ)え
嘖(さいな)む 悲(ひ)を 躲(かわ)す
夢心地の 赤らかの 末那(まな)さあ おがる
仔蟲(しちゅう)の貴方へ
涕(なみだ)を 取り成せば
未だ 忘れ掛けの 夢中の
窗(まど)は 無くなさい故(から)

幼心(おさなごころ)開く
有りっ丈(ありったけ)の祈り斃(たお)れても
手折(たお)れても 無くしたくないもの
離れても 露に 濡れても
忘らぬ 言葉

髫髮子(うないご)の 手房(たぶさ)へ
明日の 火を燈す
夢現(ゆめうつつ)の 光りかの
稿(わら) さあ
もがる 宇宙の彼方へ
投いだ手を 延ばせば
未(ま)だ 產まれ立ての 無窮(むきゅう)の
才(かど)は 垂(しだ)らない 萎(しお)れない
薨(みまか)らない故(から)